ヒューマンリレー(human relay)第5回

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ヒューマンリレー第5回 榊原秀治 総料理長

榊原秀治 総料理長
《 調理人を志して‥ 》
私が料理人を目指したきっかけは、中学2年生の時に自由研究で ケーキ作りを題材に選んだことです。高校卒業後、料理専門学校に 通いつつ和食の店でアルバイトを始めました。バイト先の先輩が家の 近所の方でしたので、色々な話を伺う中で、これからは洋食の時代、 和食より洋食を選んだ方がいいと言われ洋食に興味を持つようになり ました。その後別のレストランで働くようになり、そのレストランは オープン当時、帝国ホテルから人を呼んで始めた高級レストランでし た。残念ながら、私が入った時にはその方達はいなくなった後で、 東京からのシェフになっておりましたが、この方に最初に洋食の厳しさ を教わりました。それでもこの道に進むにあたり、両親からは「そんな に甘い職業ではないぞ。世間が休みのときの忙しい仕事だから覚悟して進みなさい」と言われましたが、この道を選び今に至ります。 名鉄グランドホテルは今年創業50周年になります。創業当時は日本初のバスターミナルビルの上に出来たホテルとして開業いたしました。名古屋観光ホテルの森総料理長からは、名鉄グランドホテルは兄弟みたいなものだからとお言葉をいただいており、誠にありがたく思っております。

名鉄グランドホテルの初代料理長は名古屋観光ホテルからいらっしゃった上田祐二総料理長でした。元は帝国ホテルにいらっしゃったと伺っております。名鉄グランドホテルがオープンしてすぐに取締役になられ、現場の第一線からは離れられましたが、その後日本ではまれな料理人から社長までなられた方です。 私が入社した時の総料理長は生川武夫総料理長でした。普段は温厚な方でしたが、一度、宴会とレストランのスープの味と濃度に納得されず、全部作り直せと全て処分されました。料理長が納得いかない物は出さないというプロとしての拘りが今も一番印象に残っております。 次の古田総料理長は休まない料理長という印象でした。古田総料理長は東京オリンピックの時に、帝国ホテルの村上総料理長に体格、料理への姿勢を気に入られたといつもおっしゃっていました。 その後岡崎総料理長、木股総料理長、水野総料理長と歴代の総料理長の方々には、本当に色々な面でお世話になりました。 自分が最初に配属されたのは、宴会のストーブ前でした。毎日宴会の仕込みで、朝からジャガイモと玉葱の皮むきに始まり、鍋洗い、パーティーのセットなどの業務に追われましたが、その日のパーティーの料理を見て、一日の終わりにノートにその日のメニューを書き込み、自身の勉強としました。当時の料理長からもこれが自分の財産になるからと言われましたが、実際何冊もある宝物となっております。 その後レストラン部門に移り、宴会とは違う、個人向けの料理を作る仕事になりました。 その当時言われたことは、レストランは宴会と違い浅く広くの世界だから、オードブルからアントレーまでの流れに沿ってお客様に楽しんでいただかなければならないということで、実際にお客様に喜んで帰っていただくことが喜びに変わりました。 私は今年で59才になり、このホテルで40年働いておりますがレストランでの勤務がそのうち3分の2になります。2番手の当時、どうしてもスープの仕事が覚えたくて、総料理長にスープの仕事をやらせてもらえるように直訴しました。当時スープ屋は3人体制で、朝一からコンソメの仕込みを始めており、一番若いスタッフが一番に出勤し、仕込みを担当しておりました。私は1から仕事を覚えたいと思い、料理長に朝一からの仕込みも担当させていただき、自分が納得出来るまで取り組んだ仕事の一つとなりました。

2004年レストランで料理長の右腕として勤務しておりましたが、当時の水野料理長が異動の為宴会部門に移り総料理長になられる際に、後任としてレストランの料理長をやらないかと聞かれました。他のホテルに比べ、遅いとも言われました。私は二つ返事で応えましたが、内心はさすがに不安ばかりでした。料理長就任後は、お客様の席に伺い、挨拶し、料理の味など様々なお客様の声を聴き顧客を増やしていくにつれ、お客様のニーズに合わせ、次は何を作って喜んでいただこうかと色々工夫をし、自身の勉強に努めました。 その後、2008年宴会料理長が引退の際に宴会の料理長に、2010年に総料理長に就任いたしました。総料理長就任の際には、レストランからの常連顧客であった社長に自分の息子のことのように喜んでいただき、一言「これから会社組織の調理の頭をやるにあたり『組織とは機械の歯車だ。大きい物もあれば小さい物もあるが、その一つでも欠けたら成り立っていかない。そこを調整していくのがこれからの君の使命だ』」と大変貴重なお言葉をいただきました。 この頃から、司厨士の総会、料理講習会などに参加し、多くの方と話をし、様々な経験をしました。昨今、食品衛生、アレルギー、食品表示、宗教による食事制限など色々な面で料理を作る環境が厳しくなっておりますが、後輩達には、お客様に感動を与える料理を、そして名鉄グランドホテル50年の伝統の味を少しでも伝えていってもらいたいと思います。。最後に、これまでやってこられたのは諸先輩方のご指導とスタッフの協力のお陰であり本当にありがたく感謝いたしております。

〔榊原秀治人事組織強化副委員長のプロフィール
平成29年2月現在
昭和33年  半田市生まれ
昭和52年  名鉄グランドホテル入社
平成16年    同上  レストラン「アイリス料理長」
平成20年    同上  宴会料理長
平成22年    同上  洋食総料理長
平成25年    同上  調理統括副総料理長
平成28年    同上 兼名鉄ニューグランドホテル料理長
≪主な役職など≫
全日本司厨士協会東海地方本部人事組織強化副委員長
名古屋フランス料理研究会副会長
中部氷彫会顧問
(社)愛知県調理師会(会員)
≪表彰歴≫
平成23年全日本司厨士協会制定アカデミー章銅章

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